高齢者の運転免許返納問題

会社の先輩で70歳でお元気に働いている方がい。本当にお若く、とても70とは思えない。高齢者の免許返納の話題になった時にまだまだ大丈夫と言っていた。認知能力の低下には個人差があり、とても難しい問題である。
まだ、長男が小学生だった201295日のこと、高齢者ドライバーに轢かれた。当時の福岡の自宅近所の美容院の隠居で赤いミニクーパーを乗り回す御老体が加害者だった。
細い道同士の交差点で自転車で飛び出した息子も悪いのだが、自転車を轢いた状態で自動車は一旦止まった。対抗もできないような徐行すべき細道で車は飛ばしていたと思われるが、道路上には自動車のブレーキ痕は一切なかった。
ただ、その時点では息子はすり傷だけだったが、高齢者ドライバーの真の恐怖はそこからなのだ。近所の人の証言では、一旦止まってから大きな音を立てて、アクセルをブンブン吹かしながら、何かを乗り越えたと言った。
普通ではとても理解ができないのだが、加害者老人は一旦止まった後にわざわざフルアクセルで息子の太ももを無理やり乗り越えた。太ももにはクッキリとタイヤの打撲跡があった。ブレーキを踏むつもりで、アクセルベタ踏みしてわざわざ子供を轢いたのだ
救急車で病院に運ばれたが、なんと単なる打撲で済み、結局は骨折や後遺症はなくて済んだ。
子どもの骨の柔らかさと強さが功を奏したのかもしれない。大人ならありえないことだ。これは奇跡以外の何物でもなく、神に感謝したい。
少し状況が違えば普通に死んでいたに違いない。
ミニクーパーとは小さく見えるが1.5トンぐらいあるかなり重い普通乗用車なのだ。軽自動車とはまったくの別物だ。さらには老人二名が乗っていた。
それが小学生の太ももの上をアクセルを吹かして無理矢理のりこえていくのである。もし、太ももでなく頭や首だったらと考えると想像もしたくない。
ミニクーパーは事故現場からはかなり遠い場所にあり、一旦走り去ろうとしたのを助手席の妻が静止をしたのだろう子ども証言では運転手本人は息子の状況を確認には来ず、老婦人だけが離れた車から駆け寄ってて自分たちが殺しかけた子供の様子を見に来たと言っていた。
小学生でもそのぐらいのことはわかるのだ。
ちなみに、救急車を呼んだのは、大きな音を聞いて出てきた近所の家の奥さんであった。加害者夫婦ではない。現場では娘を呼んで対応をさせており、老夫婦は車の中にずっと籠っていた。
その時、私は現場で加害者老人の顔すら見ていない。後日、加害者老人が謝りに来た時も、娘は謝罪していたが本人は全く他人事でうわの空であった。
それを見て、私は怒りが抑えきれなかった。認知症という訳ではないが、日常のことは普通にできても、モラルの低下や判断能力がなくなる半ボケ状態に見えた。
それとも単に性格が悪いだけなのか?警察には、あのような危険人物は免許取消にして欲しいと訴えたが、現行法では無理と言われ。結局、奇跡的に怪我が軽く済んだこともあり、仕方がなく諦めた。
高齢者の運転は本当に難しい問題である。自分の都合ばかり考えて他人を不幸にはしたくはないし、住む場所によっては不便になるのは死活問題である。
ただ、他人を殺しかけても平然としていられるようになったら、人間は御終いだなと加害者老人を見て思った。人間ああはなりたくないものだ。
しかし、誰しも老いていき、老いとはそういう残酷な側面があるだ、そして私自身もまた老いていく。
その後も、ニュースで高齢者ドライバーの事件を見る度に心を痛める。自分も60代のどこかで、免許については考えようと思う。こういうことは皆が一人ひとり自分の事として考えるしかない。
もし、あの時息子を殺されていたらと思うと、自分が他人にそういう思いをさせたくはない。