崎陽軒のシウマイ弁当が廃棄

昔の会社の先輩のFacebookの投稿で、新型コロナウイルスで立ち往生をしているダイヤモンド・プリンセス号に崎陽軒からシウマイ弁当4000食が無償提供されたがそれが廃棄をされたことに対して、どうなっているんだという怒りの意見が述べられていた。

私も最初に感じたのは、なんてことだ、職員の怠慢ではないかなどと思った。それは一般の日本人の普通な反応ではないかと思う。この記事を読んだ時に思い出したのは、藤原和博さんが「坂の上の坂」の講演会で、東日本大震災の際にボランティアでケーキを届けた人がいるが、人数分に足りなくて受取を拒否されたという話していた。相手の善意を考えて、柔軟に工夫をすればいかようにも対処は可能であっただろうというお話だったと思う。

しかし、よく考えると今回の話は少し違うかもしれないと思った。誰も悪くはないのではないかと思ったのだ。もちろん、事の顛末についてネットの記事で知ったのみであるので、すべては私の想像に過ぎない。よって、何が正しいかを主張するつもりはないことを最初に申し上げておく。

ダイヤモンド・プリンセス号に乗っているのは外国人も多い。その中にはベジタリアンやイスラム教徒、さらには食物アレルギーを持つ人もいる。また、豪華客船は世界中の港で食料調達をするのだが、衛生面においてトップレベルの日本とは全く事情の違う国での調達にも対応をしているはずである。豪華客船を名乗っているだけに、一流ホテルマンのように「お客様の安全は絶対に我々が守る」というような哲学も持っているに違いない。

たとえば、日本の崎陽軒ではなく、インドの港でインドの弁当屋さんが善意で弁当を届けてくれたとする。衛生面では日本とは全く違うし、水の品質もまったく違う。その場合には厳重な確認が必要となる。私は幼少時にテヘランに行った最初の頃に生水を飲んで1週間入院をしたが、水の高度が全く違うために普通の日本人が飲めば病院送りになっても仕方がない。国によって気を付けるべき内容は違うが、世界中を旅する一流ホテルであるならば、食品の受け入れについてはとんでもなく厳しい検査を科しているに違いない。たとえ、日本のようにトップレベルの衛生面の国であってもその基準を変えることはないだろう。それが企業として生き残るためのコアコンピタンスであるならば、それは崩さないに違いない。

また、ハラル食でもなく、ましてや豚肉を使っているシウマイ弁当は多くの外国人にはまったく向かないので、当然に代用食を用意する必要がある。それはハラル対応素材で作った鶏肉弁当をよこせという話になりかねない。客船側は乗客のアレルギーも含めて口に入るものは細かい配慮をしているに違いない。さもなければ、一流とは呼べない。崎陽軒が善意で差し入れしてくれるのは理解しているとしても、賞味期限までの間にその対応ができるかと言えば、私は時間的に難しかったのではないかと思うのだ。

一般の日本人は、ハラルであるとか、ベジタリアンであることについてはあまり気にしないのだが、当の本人たちは非常に気にする。それはイスラム教徒の多い国に住んだことのある私には理解ができる。 崎陽軒は普通の日本人の会社である。そこまでは考えつかなくても仕方がない。ただ、本当に求められるものを用意するなら、そこまで考えざるを得ない。

豪華客船というのは、動く外国である。日本人の考え方とは全く違う考え方を持っているだろう。そして、日本だからとかインドだからということで、やり方は変えないのが一流というものだ。

今回の話は、崎陽軒の善意と客船側の「お客様の安全は我々が守る」という善意が、角を突き合わせたようなことではないかと思う。それは誰も悪くはないのではないのかということである。

世界が平和でありますように、皆が理解しあえますようにと祈るばかりである。