駅員さんのプライド

勤務先近くの地下鉄の駅で朝にホームを歩いていると、駅員さんが黄色いラインに立って、大きく両手を広げて立っている。それ自体はいつもの光景だ。

ホーム終端のあたりに2名の駅員さんが両手を大きくまっすぐに開いて立っているが、そこから「これ以上は飛込みをさせない」というような声なき声がドンと聞こえてきた気がする。

私の場合、他人の感情の波動が不意に飛び込んでくることはさほど珍しくはないが、それはイメージで来るので言葉にならないのだが、言葉で感じることは珍しい。

考えてみれば、前週にその駅では飛込み事故があったばかりである。私自身も発生15分後にホームに降りて、その混乱から逃れるために別路線に乗り換えた。ああ、あれがあったからなのかーと妙な納得の仕方をした。

彼らの背中は、ここでもう犠牲者は出したくないという思いが感じられた。後かたずけにしても、客からのクレーム対応にしても、職員にはいいことなど何もない。それだけではなく、自分の関わる仕事で不幸な人を見たくないのは本音であろう。

安全というのはこのような縁の下の力持ちの人々のプライドによって守られているのだな。などと思う次第だ。