四谷怪談のお岩さん

テレビドラマで”妖怪シェアハウス”という番組がやっていて、妖怪の一人としてお岩さんも出ている。酒呑童子やぬらりひょんはともかく、お岩さんは幽霊であり、妖怪ではない。(笑)

四谷怪談と言えば、新宿区の四谷を思い浮かべる。四谷には於岩稲荷田宮神社、於岩稲荷陽運寺というお岩さんを祀った神社仏閣がある。

ところが舞台になった四谷とは四谷違いで、雑司が谷四谷町(現:豊島区雑司が谷)だという。むしろ、鬼子母神のあるあたりである。今は地名自体がない。

新宿区四谷には於岩稲荷田宮神社、於岩稲荷陽運寺というお岩さん所縁の史跡があるから、だまされる。わたしはすっかり世間に騙されていた。(笑)

豊島区には西巣鴨にお岩通りという通りがあるのだが、こちらは妙行寺という寺にお岩さんのお墓があるご縁でその名がついているらしい。

私の東京の部屋からは、四谷も西巣鴨の自転車でいける範囲であるが、雑司が谷が一番近い。それで、お岩さんに因んだ史跡でもあるかと探すと探しきれなかった。

お岩さん調査を続けると、伊右衛門から非道な仕打ちを受けて、恨みながら死んで化けて出たというのは創作でしかなく、実際のお岩さんは夫婦仲睦まじく、旦那の伊右衛門は頑張って、お岩さんが賢妻として旦那を支え、傾きかけていた田宮家を再興したというのが本当の話。

没後も良妻賢母の鏡として、お稲荷さんに祀られた。どこをどう間違ったのか、200年ぐらい経過して、鶴屋南北が東海道四谷怪談という戯曲を書いたのがヒットして、かなり実際とは違ったデマが日本中に広まり、今のお岩さんのイメージが定着してしまった。

一番の悪役は伊右衛門ではなく、戯作者の鶴屋南北である。お岩さんは不名誉なデマを流されて、鶴屋南北のせいで浮かばれない?もっとも200年も経っていれば、とっくに成仏しているだろうが。

世の中、世間の常識が本当とは限らない。むしろ、嘘に塗り固められているのかもしれない。今はネット社会なので、さらに深刻かもしれない。声が大きい方が嘘でも本当になる。

私が学校で学んだ歴史など、今の子供に言ったら笑われる。あげくの果ては、今は恐竜はトカゲの仲間ではなく、なんと鳥らしい。羽毛が生えていたというのだから、まったくイメージが合わない。あの巨大な恐竜が鳥であれば、さぞかし大きなから揚げが作れる。

歴史なんて、所詮は記録の断片を紡いで、人の認識が作った物語でしかない。歴史や常識が正しいと思ったら大間違いなこともある。