「思わず考えちゃう」ヨシタケシンスケ

絵本作家のヨシタケシンスケさんを知ったのは朝の情報番組のゲストとしてだったと思う。面白いな、この人と思ったのを覚えている。うちの息子たちに絵本を買ってた頃にはまだいなかった絵本作家だ。

図書館で絵本を見てみようと思ったが、人気で全部貸し出し中。エッセイがあるというので「思わず考えちゃう」という本を読んでみた。

テレビをみて思ったのは、まず随分と自分が後ろ向きなのを主張する。さらに、相当にゴチャゴチャといろいろ考えるタイプである。

私も心配性で後ろ向き、さらに相当にゴチャゴチャとどうでもいいことを考える所があるので共感をする。ただ、彼は理屈をこねても他者を否定はせず、違いに注目をする。自虐的ではあるがたぶん自分の事を自責することはないんじゃないかなという印象を持った。

本を読んでみると、やはり実に興味深い。

まあ、どうでもいいことを理屈をこね繰り回して考えている。それを自分自身で面白がっていて、さらに絵本のネタやエッセイにしてしまうのだから素晴らしい。私ならつい、あれが悪い、これが悪いと裁いてしまうかもしれない。

彼は絵を描くのが得意なので、気がついたことを絵にしてスケッチしておく。口数が少ないので、講演会で時間が余るとそれを皆に見せるとその独特の観点から面白いと言われるという。

生きていて、もがいているだけで、その表現がお金になるのだから羨ましい。

それというのは、彼が実はとても自然体であるからだろう。自然体に変人と呼ばれたり、それを自覚をしながら、受け入れて、自分なりのやり方でゴタクを並べているように見える。

私は人からよく無駄に理屈をこねて考えすぎるとか、ゴチャゴチャと考えすぎと否定的に言われるが、こういう人がいて、人気があるんだと思うとなんか心強い。ちなみに、私も自分が変人であることは認めている。

人それぞれに、感性や考え付くことは違っている。私などもメモ帳を持って歩き、思いついたこと、降って涌いた言葉などを書き留めている。内から湧くような言葉は30分と立つと忘れてしまう。メモ帳を持ち始めてからは自分が常になんかをゴチャゴチャと考えており、それをきれいさっぱりと忘れていくことに気がついた。

メモ帳は今170冊ぐらいになっているが、愚にもつかない思いついたことや考えたことが書いてある。ただ、ヨシタケさんのように絵が描けるわけでもなし、面白くもないので、大した役には立ってはいない。

唯一役に立ったとすれば、自分というよくわからないイメージの存在を文字なり、絵なりに具体化することで、自分の潜在意識と向き合う効果はあった。絵でも、文章でも、写真でも、工作でも、音楽でもなんでもいいから、自分の内面を表現をすることは自分と向き合い、癒し、受け入れるのに役立つのだ。

うつ病で廃人同様であった時期も含めて、長い年月をメンタルで苦しんだが、自分というよくわからないモノを知るために向かい合うことで、かなり心の中が平穏になった。

人生の一つの目的は、自分というよくわからない代物の中身と向き合うことにあるのではないか、そういうどうしようもない欲が人にはあるのではないかと思うのだ。