若いお母さんと心理ブロック

地下鉄の中で1歳児ぐらいを連れた若い夫婦がいた。ベビーカーに乗った男の子は前にいたご婦人のお尻を小さな手でペチペチやりはじめた。

若いお母さんは、子供の手をもって退けるが、また幼児はペチペチを始める。それでお母さんは黙って手をぎゅっとと持っていた。

子供の側から見ると、何が問題なのかがわからない。ただ、なぜか母親が黙って自分の手を押さえつけている。こんなことが潜在的なトラウマ、心理ブロックを作る原因になるのだろう。

もちろん、母親にはなんの悪気もない。言ってもわからない1歳児に前のおばさんのお尻を触ってはいけないと教えることができないので、そういったことになる。

子育てにありがちなシーンだ。

それだって、自分の子供がバスや電車でギャーギャー騒いでいるのに、母親は友達とおしゃべりに興じたり、スマホをみて子供に全く関心のない連中に比べたら相当に良い母親である。

私自身も子供が生まれてすぐなど全くの余裕がなく、何をどうしたらいいのかがわからなかった。

私はその男の子の前にいたので、「これは触っていいよ」「本を好きになると賢くなるよ」などと言って、手に持っていた本を目の前に差し出した。子供は本をいじくり始める。彼らにとって、よくわからないものを触って確かめるのが仕事のようなものだ。本を開いたり、表面を触ったりとご満悦である。

若い両親もニコニコとしていた。

お尻を触られたご婦人でも、幼児を相手に怒るようなことはないだろうし、もしフレンドリーな女性ならむしろ赤ん坊に関わってくるだろう。往々にしてたいした問題にはならない。

若い親にはそのさじ加減がわからない。もちろん、私も子供が小さかった頃はわからなかった。また、昨今の他人に厳しすぎる風潮も子供を持つ親には逆境だ。

これこそが核家族の問題であろう。周囲を気にしすぎて、子供を押さえつけようとすると子供の中に様々な心理ブロックができあがっていく。もちろん、親は良かれとしてやっているのだから、不幸である。

祖父・祖母が常に近くにいるのであれば、その経験は子供の情操教育には大きく影響するに違いない。

私自身もUSPTカウンセリングやホ・オポノポノのクリーニングによって心理ブロックを除去することに苦労をしてきたが、それもまだ若く未熟な親が核家族であった中での長男であったことは無関係ではないだろう。

親にはなんの悪気もない、しかし未熟ゆえの無知が子供が苦しむ大元を作っていくことになる。

若い夫婦が子育てに悪戦苦闘している所に、知らないおじさんが少し口出しをしていくことは実はそんなに悪いことではないのだろう。やってみせれば、子供をどう扱えばいいのかがわかるというものだ。

息子たちが幼少時に向き合った私自身がお世辞にも出来が良かったとは言えないが、彼らに関わることで得た知見は大きい。今、息子たちを育てるなら、きっともっと自由に自分への縛りのないようにして育てることができたのだろう。経験は重要なのである。