ドラマ うつ病九段

先崎学九段というプロ棋士のうつ病闘病記のドラマ化である。先崎さんは漫画3月のライオンの監修をしている。3月のライオンはアニメをみたことがある。

先崎さんは子供の頃から天才と呼ばれ、17歳でプロ入りしている。3月のライオンの主人公の桐山零を彷彿させる。

そんな天才でもうつ病で頭が回らない状態になる。その葛藤、苦しみがドラマでは描かれている。

新聞や本が読めなくなる、色がわからないなど感覚が鈍くなり、喜びの感情が失われる、強い希死念慮に苛まれるなど、うつ病あるあるがリアルに描かれている。

私もうつ病になった頃に、字が読めない、頭が回らない、頭にもやがかかったようになる、人混みにいくと強い恐れが出るなどを体験をした。

今の時代はうつ病の情報がかなりあり、体験談もある。私の時代はうつ病は心の風邪、薬を飲んで半年ぐらいで治るみたいなステレオタイプで役に立たない情報しかなかった。

先崎さんはひどい状態は1年程度で戻り始めたのは幸いだったが、私の場合は何年も廃人状態だったので、これはうつ病とは別のもっとひどい病気ではないかなどと思ったものだ。

先崎さんは2年ぐらいで、闘病記を出版できるまで回復されているが、私の場合は克服に自律神経失調症と言われてから足掛け20年かかった。回復までの期間も個人差が大きいのがうつ病である。

元々、沢山の本を書いている方である。そんな頭の良い方でも、字も書けない、字も読めない、数手先も読めなくなるのがうつ病である。

先崎さんの場合、お兄さんが精神科医であり、家族の支えもあり、比較的恵まれていたようだ。

ドラマの中で、治る前には本人も家族も、元の状態に戻ることを望んでいた。しかし、うつ病の場合は元の自分に戻るのでは治らない所がある。一度壊れたピースを再構成するような所が必要だ。それはジグゾーパズルを元通りにするというより、分解したパーツを改めて別の形に組み上げるような所がある。

私自身、うつ病の最中は元に戻ることを望んだ。しかし、うつ病から復活できた後は以前のように元気になったが、似てはいるが似て非なる自分になったと思う。元に戻ってしまうとまた再発するので、いろいろ変わらざるをえない。

有名な方の闘病記により、うつ病とはどんなものかを健常者が知る機会になるのはとても良いことだ。

実際に人の気持ちはわからないものだから、こういう形でと追体験で多少なりとも感じられると良い。

実際、うつ病の人の気持ちは健常者にはわかってもらえず、周囲の親しい人からさえひどく傷つけられた経験は多くの人が持っている。

このような作品が今悩んでいる人の助けになったら良いと切に願う。