ハード&ルーズ 狩撫麻礼

昔、好きだったマンガに「ハード&ルーズ」という探偵の物語がある。かわぐちかいじが描いているが、原作は狩撫麻礼である。

彼の作品には他に「リバースエッジ 大川端探偵社」や「湯けむりスナイパー」(ひじかた憂峰名義)などがある。どれも人間の本質を暴くような作品だった。

お客さんたちは本当の自分、自分の本当にしたいことを知り、側から見ると常識的には「バカじゃないの?」と思うようなことに走ってしまう人物ばかりだが、それを嬉々としてやってしまう。世間の損得勘定には全くみあわない。

自分に対して制限だらけで、自分が何がしたいかがわからなかった私にはそのお客さんたちが眩しく見えたのではないかと思う。

社会において、常識人たろうとしてきた私にノンデュアリティな「私」はこの世界は自分が作り出した幻想だよ、もっと自由にして良いのだよと語りかけるが、小さな「私」はなかなかそんな風にはできない、

ある友人が自分の過去のことを話してくれたことがある。運命の人に出会って、内なる自分の声でそれが魂の片割れだと分かった、すごい恋をしたと。ただ、運命の人との出会いは人生のファンファーレであり、その人とうまく行くことが保証されるわけではない。運命の人とは別れてしまったが、その後離婚はして、元々リーディング能力が高かったようで、急激にキャラチェンジをして、今はヒーラーをやっている。

世間の目で見れば、良い年のオジサンが若い女性にとち狂って人生を踏み違えたとしか見えないが、彼は嬉々として生きている。まるで狩撫麻礼の作品に出てくるキャラクターのようで眩しかった。

人生には転機になる出会いや出来事がある。ただ、それを一度経験してしまうと後戻りができないことがある。

本当と自分と出会って、何がしたいのかがわかった人は幸せである。私にも何度となくそのようなチャンスが訪れたかもしれないが、見て見ぬふりをしてきたのかもしれない。私には飛び込む勇気がない。(笑)

小さな「私」とノンデュアリティな「私」は言うことが全く違う。そのダブルバインドに挟まれるのがすごいストレスである。他人が聞いたら頭がおかしい人かもしれない。(笑)