土地神様というもの

何年も昔のこと、私の友人から電話があり、相談に乗ってほしいという。

彼が父親の実家に行った時に、滞在期間中はずっと高熱、下痢、嘔吐に苛まれたという。関東の自宅へ帰ってくるとすぐに回復をした。それがおかしいと私に相談がきた。


彼の亡父の実家は地方の田舎で、敷地内にお社やお寺があるという。友人は幼い頃から、あの家には得体の知れない何かがあると思っていたという。

住所を聞いて、グーグルマップの衛星写真でリモートでその家を見る。便利な時代である。いくつかの障りがあるが、特に大きいのが強烈だ。直感的には、タタリか呪詛が頭に浮かんだ。あとは霊道?私はそれをまだ見たことがない。正直霊道は私にはよくわからない。ただ、これがまったく私の手に負えるものではないことだけはわかった。


その手の得意な人に相談をするとすぐに答えが返ってきた。それは、土地神様であると。土地神様とは自然神だが、荒ぶる神なので人が住んで良い場所ではない。

よく、町で何度お店を出しても閉店になって、コンビニすらダメで、結局はお寺や神社になってしまう土地がある。あれである。

なんとなく知っていたが、実物は初めてだ。通常は地鎮のお祀りがなされている。地鎮祭が必要な場所はそういう場所なのだろう。土地神様を人がなんとかできるものではないが、しかるべき作法によればしばらくお鎮まり頂くことは可能だという。

さっそくその作法をした。すると、すぐに衛星写真の土地から障りは減った。(薄くは残ったが、随分と邪気は減った。)


友人の祖父か曾祖父の代でその手のことがわかる人のアドバイスでお社やお寺を立てて、土地神様にお鎮まり頂いていたようだが、その祖父は祖母にも彼の父にもその内容を話していなかったと見える。

当然、友人へその亡き父からの言い伝えはない。一人暮らしだった祖母が老人ホームに入ることになって、お社やお寺に招致した神仏のお世話ができなくなった。

祈りを捧げないと神仏のパワーは落ちる。そこで、祀っていたお稲荷さんが友人に警告を送った。これ以上は土地神を抑えきれないぞというわけだ。それが高熱と下痢、嘔吐であったのだと思う。それはお稲荷さんの恩情であろうか。


実に興味深いのは、その家の近所に住む親族は他にもいろいろいる。しかし、お稲荷さんが警告を与えたのは総領家(長男の長男)である友人だ。

友人はたしかに総領家ではあるが、関東に住んでおり、たまにしか行かないのだ。そういう現世の事情や距離感などとは関係なく、霊的世界にはそういう序列がしっかりあるのだろうか。


自宅に招致した神仏は、だれも住まない家ではお祀りができないので、しっかりと感謝をして元にお戻りを頂く必要がある。その上で、土地神様にはしばらくはお鎮まり頂いておくことにしている。


世の中には少なからずいわく因縁のある土地や家屋はあるものだ。廃屋に関する規制が厳しくなった昨今、そういうものをお持ちの方はつくづく大変であると思う。