消えたお稲荷さん

日本橋箱崎に高尾稲荷神社という小さな神社がある。以前は近くのオフィスにいたのでよく参拝した。

業務で久しぶりに箱崎のオフィスに行った帰りに高尾稲荷にお参りしようと思ったら、きれいに無くなっていた。

隣の車庫と一緒に丸ごと更地になってしまっており、神社がなくなっているのだ。こんなこともあるのか?とびっくりである。

この高尾稲荷神社は江戸時代に高尾太夫という美人で有名だった花魁が祀られている。伊達家の殿様に見初められたのだが、他に想い人があり袖にした所、殺されてしまった。遺体が流れ着いたのが永代橋の近くだったことから、そこに祀られた。

この神社は珍しいことに、高尾太夫の頭蓋骨を祀っていたという。今でいうとクラブかキャバクラのお姉さんか、美人芸能人という所。それが神様になるのだから、それもまた珍しい。

この神社に興味を持ったのは、映画「さくらん」に高尾太夫という人物が出ていたことによる。実は高尾太夫というのは襲名される源氏名であり、諸説あるがMAXで11代ぐらいたらしい。伊達綱宗に殺されたのは2代目の仙台高尾。

江戸時代には高尾稲荷神社は昔の永代橋の近くにあり、当時は縁日が立つほど賑わったらしい。永代橋の位置が変わった時代に移設されて、現代のひっそりとした佇まいになった。

ところが今、移設なのか、どこかの神社に合祀されたのか、高尾稲荷神社は急にいなくなってしまった。時代によって、世の中は変わっていくものだ。

ネットで検索をしても、どこにいったかわからない。

なにせ、縁起が同情的な内容なので、いきなり更地というのでは何とも不憫である。高尾太夫が安らかに眠れる場所に行っていればと思うばかりである。