現代の雲助、ぼったくり自転車屋

息子は福岡から通学ができる隣県の国立大学に通っているのだが、腹立たしいぼったくりに遭った。

JR駅から大学まで少し距離があり、自転車に乗るのだが、自転車のチェーンがギアに噛んでしまった。スマホで近くの自転車屋を探し、一番近い店に行った。

自転車屋は分解作業を始めてしばらくすると「部品交換があるので修理に1万円かかります。」という。この修理に1万円がかかることに納得がいかないので、「修理は結構ですから、戻してください」と答える。すると自転車屋は「金を払わないなら、戻さないので、そのまま持って帰ってくれ」という信じられないことを言った。人の弱みに付け込む、雲助のような所業である。

雲助というのは旅人を篭に乗せて、山の中に連れ込んで、そこで有り金を巻き上げる山賊のことである。昔の時代劇、水戸黄門あたりにはよく出ていたが、最近の時代劇にはでてこないように思う。

結局、元の状態に戻すのに3000円を払うことで手を打った。息子は修理もしないのに、3000円を取られたと怒っていた。たしかにみごとな「やらずぼったくり」である。

別日に普段付き合いのある自転車屋に持っていたら、1500円で直してくれた。

後の自転車屋曰く、「分解する途中のボルトが固くて苦労をしたが、なんとか分解できた。」「前の自転車屋は分解ができなかったので、部品交換と言ったのではないか。ひどい話だ。」と。

そもそも、チェーンがギアに噛んだぐらいで交換する部品がわからない。

ここからは私の推測だが、前の自転車屋も最初からぼったくりをするつもりではなかったのだろう。分解して、ボルトで苦労しても外れなかった。分解できないので直せないとなれば、普通は金は取れない。しかし、彼は手を動かした分は成果に関係なく金は獲りたい。彼は出来心で一計を案じたのだろう。

ひとつの可能性としては、ギアごと交換して1万でいけるかどうかわからないが、1万円でギアを交換する方法を提示した。もっとも、その場合は「ボルトがダメになっているからギアごと交換する」とか言うだろう。二つ目の可能性は、修理に1万円と吹っ掛けて、あきらめさせて、金をよこさないと元に戻さないと言い張ることで金を奪う。分解できなかったとは口が裂けても言えない。

可能性としては、2つ目ではないかと思うわけだ。肉体労働者は結果に関わらず体を動かせば金をとるもので、とにかく作業をしたから金を寄こせというのはある話だ。しかし、サービス業としては完全に失格である。こんなことをしていては普通は潰れてしまうのではと心配してしまう。

どっちにしても、修理もせずにぼったくられたのは間違いない。別の自転車屋が良心的とはいえ、1500円で直してくれた修理なのだ。もしかすると他の大学生も雲助の網にかかっているのかもしれない。ひどい話である。

息子はもっていく前にグーグルの評価を確認したら、5つ星の評価しかなかったと言っていた。そもそも、その時点で怪しいのだけど。内輪で評価を偽造している小さな店は多い。ぼったくりバーとかなら、エリアとか、客引きについていかないとか注意のしようもあるが、自転車屋では注意のしようもない。

息子の手順になんの落ち度もなかったが、このような理不尽な目に遭った。社会にはなんの落ち度もなくても、当たりが悪いとこのような目に遭うことがある。

学校で教わるように、正しい手順を踏めば正しい答えが出る訳ではないのが社会である。大人になるにはそれを知ることも勉強だ。それを知るための経験が3000円で済めばよかったと言える。

この社会ではもっとひどい理不尽に遭う人はいるのだから。