蛇憑きの女

私が若い頃、東京でよくホームパーティに参加をした時代があった。当時、外資系の人たちなどが、月100万円超え賃料のコンドミニアムに住んでホームパーティを催していた。

私もなぜかそういう場所に出入りするようになって、いろんな人に会うことになった。

当時、ちょうど仙道の師匠から気功を教えてもらっていた時期と重なったので、そういうオカルティックな視点も身につけはじめた頃だった。

まだ、未婚だったので、女性と知り合うのも目的の一つだったが、残念ながら女性と仲良くなるというケースは少なかった。とはいえ、知り合いとなる人はでてくる。

Vシネマなどにも出演したことがある女優の卵だという女性と知り合いになって、顔なじみになった。彼女は少し陰があって、とても妖艶でというか、セクシーな印象があり、魅かれつつもなんか自分とは縁遠い世界の人だと思った。

彼女を見ると、なんとなく、その妖艶さから蛇憑きという印象がぬぐえなかった。もちろん、当時の私には確証もないし、よくわからなかった。

ある日、パーティで女性から「おひさしぶり」と声をかけられた。ふと振り返るとどこかで見た人がいるのだが、誰だかわからない。「今度、女優をやめて田舎に帰ることにしたの」という女性は女優の卵の彼女だった。

見た印象が全く変わったのは、妖艶さがまったく抜け落ちていた。明るい狸顔のむしろかわいらしい笑顔の人だった。蛇憑きという印象も丸ごとなくなっていた。憑き物が落ちたというのはこういうことなのかと思った。そう思うと彼女の陰のある妖艶さに魅かれていたことにもぞっとした。

そこで私は思ったものである。芸能界というところはたとえVシネマであっても、恐ろしい所である。まさに魑魅魍魎の住処であると。

その後の彼女がどうなったかわからないが、一般人として幸せになってくれたら良いなと思う。