幽霊と生け贄

霊能のある方から聞いた話である。彼は霊と話ができるようになったのだが、ほとんど見ることはない。

所がその時はハッキリと見えた。レンタルビデオ屋で向こう側から女性がうつむいて歩いてくる。普通はDVDの棚を見ながら歩くのだが、その彼女は棚には目もくれず、下を見て歩いてくる。

すれ違った時にそれが彼の中に入ってきたのを感じた。

家に帰ってから集中をして、それと話した。彼女は最近亡くなった。説得してあの世に向かいように誘導しても、成仏しない。彼女曰く、もう一人一緒にいると言う。

そこで、そのもう一人と代わってもらって会話した。もう一人は何千年も前に亡くなった古い霊であった。自分は宇宙から来た恐ろしいモノを鎮めるために生け贄にされた。今でもそれを抑え込んでいる。自分は長い間その存在を代わりに浄化できるものを探していると語った。

話を聞いた彼はその存在の浄化を試みた。するとつながった途端に真っ暗な闇に落ちた。全く何をどうして良いかわからなかったが、自分が持ってかれると思ってつながりを解いた。

生け贄になった女性にどうにもできないと伝えると、ふっとどこかに行ってしまった。彼の話はここまでである。

数千年前の霊というのに私は出会ったことはない。生け贄になった霊がなにか恐ろしい存在を消滅させてくれる人を探して、彷徨っているというのは、かなりのホラーである。

触らぬ神に祟りなしだが、見事な祟り神である。そんなものに出会いたくはないものだ。