“見る”と”会う”

先日、あるパーティーで上川依子さんという方とお会いした。性転換手術をされて、その体験を原作にしてマンガ本を出版された方である。

その際は、ジェンダーのことに触れるのが難しいと感じて、もっぱらIT業界あるあるの話題でおしゃべりをした。最後に本を買って読みますねと言い、電車の中でアマゾンから注文をした。

さよならちんちん ウェルカムまんまん ~OLになりたくて性別適合手術しました~

http://bit.do/fphX2

この本を読んでいる間、大変恐いというのが正直な感想である。コミカルに描かれてはいるが、手術をするまで、手術内容、手術後の様々な問題が赤裸々に描かれている。なぜ、ここまでして大変な思いをしたいのかについてはまったく共感ができなかった。

それは私が極平均的な男性で、子供の頃に悪いことをして、親に「そんなことをするとちんちん切っちゃうぞ」などと言われて恐怖を感じたものだ。そこには、ケガをして痛いという以上に男でなくなる恐怖を感じていたと思う。男性にとって、男性器を失うというのは男性喪失の恐怖がある。

しかし、彼女にとってはむしろそれが負担で、苦しむ原因であったのだろうということは推し量れる。そこには並大抵でない苦しみがあったのだろうと、共感はできなくとも受容はできると感じた。

彼女にその感想を伝えると、生きるためにに必要で、手術後の生活に希望があったと語った。

人と人は自覚においてこれほどに違いがあるのだと私は感じた。人それぞれは本当に全く違う事情を抱えて、感じること、考えることはまったく違い、相容れない。それを共感はできなくても、受容することはできるのだなと改めて思う。

この本は、同じ問題で悩む人に選択肢として手術を選んだら何が起きるかを解説する目的に描かれたものであろう。しかし、私のように全く興味をもたない人への啓蒙をする効果はあるはずだ。

私が本好きであることから、 実は この本は以前から表紙は見たことがあり、その存在は知っていた。ただ、まず手に取ろうとは思わなかった本である。私は今までにも性転換手術をした人はテレビや街で見たことはあったはずだ。

でも、通り一辺倒の知識はあっても、それ以上踏み込もうとは思わなかった。たわいのない話であったとしても、実際に会って話す事で このマンガを手に取ろうと思ったことはスゴイことだ。 “見る”のと”会う”のではまったく違うのである。

良い学びを頂きました。